ここ2回の記事では、先月NHKBSで放送されたドキュメンタリー番組「あなたの中のミクロの世界」の内容、私たちの体に住む微生物ということについて書きました。
 それらはマイクロバイオーム(微生物叢)と呼ばれます。その多岐にわたる働きは、ヒトの体にとってとても重要で、私たちはそれらの微生物なしには生きていけないそうです。
 私たちの体を一緒に作り上げている、と言っても良いこの微生物の話はとても興味深いので、もう少しこのことについて書いてみようと思います。


 ヒトの腸内細菌の数は、私たちの体を構成する細胞数の約10倍だそうです。そして、体のほかの部分に住む微生物を加えると、その数は膨大なものになります。
 それだけの数の目に見えない微生物が体の内外をひしめいているわけですが、その保有する遺伝子の数を較べてみるとその差はさらに大きくなります。
 ヒトは約2万の遺伝子を持っていますが、微生物達が持つ遺伝子の数は二百万から二千万もあるとされるそうです。私たちが生活する上でこれらの微生物遺伝子は、ヒトの持つ遺伝子より重要ではないかとも言われています。
 これだけの数の遺伝子があるということは、とてつもない大きな知恵を持っていることを意味し、私たちの身に起きる多くのことに対応して、私たちを支えてくれているはずです。
 ヒトのDNAは誰であっても99.9%同じで、その違いはほんのわずかです。しかし、人それぞれが持っている微生物の種類は10%くらいしか共有していないということです。
 どのような微生物叢を持つかは、食べ物、ライフスタイル、周囲の環境などによって変わりますが、なるべく多くの種類の微生物がいたほうが健康にとって良いそうです。
 したがって、なるべくさまざまな形で多くの微生物に触れる機会を持つことが大切ということになります。

 ベストセラーになった新谷弘実医師の「病気にならない生き方」に、初めて会う犬と仲良くなるには、手に自分の唾をつけて舐めさせればいい、という話が出ていました。
 新谷先生は子どもの頃から、なぜかこうすると犬が喜ぶということを知っていたそうです。そして、医師になり、本の中で詳しく書かれている酵素の働きを理解するようになって、犬が唾に含まれる酵素を欲しがっていたのだ、ということが分かったということが書かれていました。
 犬がヒトの唾に含まれる酵素を欲しがっているのは確かかもしれませんが、酵素の他に自らが持っていない細菌を取り入れようとしていることもあると思います。
 ヒトがフレンチキスをすると、10秒間で8000万の細菌を交換することになる、というデータがあります。
 そうなると、キスは口内細菌を交換しあう行為とも言えることになりますが、細菌を交換することでより多種類の微生物がお互い体に取り入れられ、病気の原因となる微生物の侵入に対する抵抗力が、強められるということがやはりあるそうです。
 たぶん犬も本能的にこのことを知っているため、ヒトの唾を欲しがるのではないかと思いました。。
 私には自分にない細菌を取り込んで免疫を上げる、という話はとても面白かったですが、ネットの書き込みを読んでみると、キスで大量の細菌が行き来するということに抵抗があるという人はけっこういるようです。
 別に知らない人とキスするわけではなく、恋人同士だから良さそうなものですが、ディープキスは不潔だと感じる人がいるのに驚きました。

 不潔ということでよく話題になるのが、外出時のトイレです。
 便座に触れたくないから和式がいいとか、和式は飛び散って汚いとか、便座を除菌する、とかいろいろと意見があります。
 私はなんとなく便座に触れたくない気持ちがあって、和式があれば和式にします。(股関節が固いので、ストレッチしたいということもある)洋式しかないときは、便座がきれいか確認して、ペーパーで空拭きしてから座っています。
 むかし、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎さんの本を読んでいたら、若い人が座った後のトイレに菌をもらうため喜んで入るという話が出ていました。
 寄生虫をお腹で飼っていたことから「寄生虫博士」とも呼ばれる免疫学者の藤田先生は、「腸内革命」「清潔はビョーキだ」「バイキンが子どもを強くする」といった本を書いて日本人の過剰な清潔志向に警鐘を鳴らしています。
 若い人の菌をもらえば若返るかは分からないけれど(有名な学者が言うのだから本当かな)、先ほどから言っている細菌の多様性という見方からすれば、便座が明らかに汚れているのでなければ、除菌してしまうのは、せっかくの菌を取り入れる機会を逃すもったいない話なのかもしれません。
 私もこの細菌をもらうという考え方を知ってからは、外の便座に対する抵抗感が多少薄れました。
 他人の菌が気になって仕方ない人なんかも、この菌の多様性の重要さを知れば、少しは気持ちに変化があるかもしれません。
 実際はトイレの便座よりパソコンのキーボードや携帯電話、台所、ドアノブ、つり革などの方が細菌が多いみたいです。
 トイレを気にしても、そういったものは気にしない人も多いと思いますが、免疫力が落ちていないときなら、菌が多いものに触れても大したことはないですし、多少不潔でいるくらいの方が、かえって免疫力を強めるということもあると思います。
 

 日常生活ではさまざまなことで多くの人の菌に触れる機会があります。
 例えば、家以外のトイレを使うことの他にも、混雑した場所へ行く、イス・テーブル・ドアノブなど誰かが触ったものを使う、銭湯・温泉に入るといったことです。
 特に銭湯・温泉に入ることは、皮膚常在菌の交換がされるという意味もかなりあったのではないか、と私は思っています。
 多くの人が裸で出入りする公衆浴場へ行けば、さまざまな菌に触れることは当然あるでしょう。
 たくさんの菌と聞けば嫌悪感が起きるかもしれないですが、ここまで書いてきたように、体に住む細菌には多様性が必要です。そして、銭湯・温泉はその細菌の交換が一番できる場所だと思います。(もちろんそういった場所は衛生管理がされているので、病気を起こすような菌はいないでしょう。私が言っているのはヒトにとって無害かつ有用な細菌のことです)
 現代は日常的に銭湯に行くことはほとんど無くなりました。それは他の人との細菌の交換が少なくなったことを意味しますが、このことと現代人のコミュニケーションが希薄になっていることには関連があるように思えます。
 他人の菌が皮膚につけば自らの菌との交流、受け入れ、戦い等変化が起きるはずです。しかし、家族などの決まった人以外の菌と触れる機会が少ないと、だんだん他人を気持ち的にも受け入れことが減っていくのではないでしょうか。
 近ごろは菌を排除すべきものと考える人が増えています。「自分以外は汚い」と他の菌を遠ざけ、自分にない菌を取り入れることをしないでいると、免疫力が落ち、他人を理解しようとしない心の狭い人になってしまうかもしれません。(自分に対する自戒の意味を込めて言っているところもあります)


 この体の常在菌の多様性とコミュニケーション能力の関係の話は私の仮説ですが、直感的にその関わりはあるのではないかと考えています。 
 私にはそういうことを調べる手立てはありませんが、調べればけっこう面白いことが分かる、研究する価値があるテーマかもしれないので、そういったことを研究している方どなたかが調べてくれればいいのに、なんて思っています。

 (次回に続きます)



コメント

Re: タイトルなし

Re: タイトルなし

私も藤田先生の本はいろいろ読んだのですが、図書館で借りて読むことが多いので、はっきりどの本かはおぼえていませんでした。
調べたら「日本人の清潔がアブナイ!」(小学館)に 中学生にこの話をしたらバカにされた、というエピソードが書かれているみたいです。

お返事ありがとうございます!

申し訳ありません。説明を書いたつもりが
抜けていました。
若い人が座ったトイレに菌を貰うために喜んでる入ると言う内容の本は教えて頂いた
本の中のどれでしょうか?
度々申し訳ありません。

Re: おはようございます

ももさんこんにちは。

出版社名を入れなかったので分かりにくかったですが、文章の中にあった「免疫革命」(海竜社)「清潔はビョーキだ」(朝日新聞社)
「バイキンが子どもを強くする」(婦人生活社)が本のタイトルです。
藤田先生の本の本は面白いものがいろいろ出版されています。図書館なんかでも見つけられると思いますよ。

おはようございます

はじめまして。

ももと申します。
ブログ内に出てくる藤田紘一郎 先生の本のタイトルがわかれば教えて頂きたいです。
よろしくお願い致します。
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