7月19日、米共和党はドナルド・トランプ氏をアメリカ大統領選候補に正式に指名しました。
 それに先立つ6月28日、ペンシルベニア州で行われた演説でトランプは、自身が大統領に選ばれたときには、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)からアメリカを撤退させると発言しました。
 このことは日本のメディアでも報道されましたが、その詳しい発言内容は過激すぎたためかあまり取り上げられませんでした。
 その演説の中でトランプは「TPPはアメリカに対する終わりのないレイプ」「TPPは一部の特権階級と利権に吸いついている連中の利益のためのものであって、多くのアメリカ人にとってはレイプだ」ということを言いました。彼自身もひどい言葉と断りを入れてから言っていますが、ちょっと驚かされてしまう言い方です。
 私はこの発言をBSスカパーの無料放送「ニュースザップ」で、番組のコメンテーターである詩人のアーサー・ビナードさんが取り上げたことで知りました。(この番組、最近見始めたのですが、他のテレビ番組にない自由さがあってとても面白いです)
 そこでアーサーさんは、自分も言葉を扱うものとしてTPPをうまく譬える言葉をずっと考えてきたけれど、このトランプの言葉以上にTPPの本質を的確に表現する言葉はないだろう、と言っていました。


 トランプのこのような発言が飛びだすほど、TPPはアメリカ大統領選で大きな争点になっているみたいです。
 日本ではついこの前、参院選が行われましたが、TPPに関しては、あまり論じられなかった改憲よりさらに取り上げられなかった気がします。(TPPによる農業への影響を深刻に考えている東北・北海道などでは自民党がほとんど負けましたが)
 TPPのことを全く知らない日本人もいるはずですし、知っていたとしても、「経済に好影響を与える」「輸入食品が安くなる」とメリットが多いと思い込まされている人がかなりいるのではないでしょうか。
 こういった人々の無関心・誤解が起きているのは、マスコミがTPPの本質的な問題をあまり伝えないためだと思います。マスコミはTPPで恩恵を受ける大企業から広告費をもらって成り立っているため口をつぐんでるのでしょう。
 しかし、アメリカでは、TPPというのは多国籍企業や投資家が自分たちに都合のいいようにルールを決め、好き勝手に儲けるために作られたもので、大多数の人々にとってはデメリットでしかない、ということが広く知れわたっているようです。そのため、最近まで行われていた大統領予備選の候補者のほとんどがTPP反対を表明していました。
 日本人はトランプの「レイプ」発言を、彼がいつも言っている暴言の一つととらえるかもしれませんが、TPPは多国籍企業・投資家のための条約ということを知っているアメリカ人にとってこの発言は「よく言っていくれた」と思わせるものなのかもしれません。
 予備選が終わってアメリカ大統領は、共和党候補のトランプ氏か、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官のどちらかを選ぶものになりました。(トランプのことを嫌う人は多いですが、ヒラリーもその華々しすぎる経歴が嫌われていて、今回の大統領選は史上最も不人気な候補者同士の戦いと言われている)
 ヒラリーもTPP反対と言っていますが、元々は推進してきた人ですからあまり信用できません。ヒラリーの「TPP反対・再交渉が必要」という言葉は多国籍企業をさらに有利にしようとして言っているように聞こえます。

 TPPはアメリカと日本両方が、承認しなければ発効されない仕組みになっています。
 日本では、TPPがもう決まったかのように扱われていますが、国会でもまだ承認されていません。
 本格的審議は今からなので、野党には問題点を追及するなど頑張ってほしいですが、この前の参院選における与党圧勝という結果を見ると、TPP審議にはあまり期待できないかもしれません。
 となれば、TPPを逃れるためには、完全撤退と言っているトランプだけが頼れる存在です。(しかし彼はアメリカの利益のためのみにTPP反対と言っているのであって、TPPでひどい目にあう日本人のことなど少しも気にかけていないでしょうが)
 トランプの「イスラム教徒の入国禁止」「メキシコとの国境に高い壁を建てる」「日韓の核武装容認」といった数々の問題発言を考えると、彼が大統領になることにはかなり不安を覚えてしまいます。
 けれども、とにかくTPPをひっくり返してくれるなら応援するしかありません。それくらいTPPは、日本の将来に大きな災いをもたらすものだと思います。
  

 トランプは、TPPでアメリカ人の職が奪われるという雇用の問題を強調しています。一方、日本では農産物が関税なしで輸入されて、これが農家へ大きなダメージを与えるので、主に農業の問題としてとらえられています。
 TPPが発効すれば、日本の農業は確実に衰退していき、日本人は食べ物を完全に外国に頼らなければならなくなるでしょう。そうなると今度は食品の輸入価格が高くなってもそれを買わなければならない、ということにつながるはずです。
 しかし、TPPは農業への打撃だけにとどまらないもっと大きな問題をはらんでいます。
 このことは前に書いた「TPPの危険性をつい最近知りました 」の記事で取り上げましたが、TPPで一番問題と考えられているのは、そこにISD 条項というものが入っていることです。
 TPPは条約締結国間でルールを同一にするということを決めています。
 そして、多国籍企業や投資家が、その同一ルールということを盾に国や地方自治体・政府系企業を訴えることを可能にするのがISD条項です。このISD条項を使って信じられない額の損害賠償請求が行われる可能性があります。
 ISD訴訟を審理する裁判所はアメリカにあって、過去にアメリカの企業勝訴の判決が多くなされています。したがってISD条項があると多国籍企業は、自分たちにとって不利なあらゆることを訴えて、変えさせることが出来るようになります。
 
 日本では主に次のようなことが懸念されています。
 ・遺伝子組み換え食品の規制撤廃 
 ・残留農薬、食品添加物の基準引き下げ
 ・食品の「地産地消」奨励の禁止
 ・国民皆保険制度の縮小と民間の医療保険や混合診療
  の導入
 ・薬の価格・ジェネリック薬の使用といった医薬品の
  取り決めへの介入
 ・かんぽやゆうちょ、各種共済といった金融サービス
  への改革要求
 ・軽自動車やエコカーの税優遇の取りやめ
 ・水道事業の民営化
 ・公共事業の海外企業への解放
 ・さまざまな環境基準への介入などです。

 TPPで多国籍企業は、これらのことを自分たちに不利益になる取り決めとして訴えることが可能になります。
 こういったことは私たちの暮らしを守るために行われている事柄ですが、これ不服として企業が国や自治体を訴えて賠償金をもらい、制度を変えさせることができるというのは、国の乗っ取りと言ってもいいのではないでしょうか。
 TPPの条文は、難解な英文で2000ページにもわたり書かれているもので、これを全文読んで理解している政治家は少ないと思います。そして、TPPのルールは一国の憲法や法律よりも上位に位置づけられ、いったん発効されたら絶対に抜けられない取り決めになっています。(抜けようと思ったら戦争を起こすしかないのでは)
 こういったことから、TPPは日本にとっても一部の大企業・投資家が儲かるだけのもので、実際に起きるのは国の喪失・植民地化であり、多くの人にとってはトランプの言う通り略奪・レイプでしかないのでしょう。
 さまざまな問題点があり、アメリカでもこれだけ騒いでいるのに、TPPに対してなんの危機感を持ってないように見える政治家・官僚・マスコミは、何をやっているのだろうと思ってしまいます。国を売り渡しても平気ということでしょうか。
 とにかくこんな状態では、トランプ大統領誕生を期待するしかありません。これまでの彼の発言からすれば、かなり混乱が起きるとは思いますが、未来永劫にわたるレイプよりはましでしょう。
(今までタブーとされてきたいろんなことに踏み込み過ぎて、命を狙われないか心配ですが・・・)



 トランプが当選すれば「アメリカ最後の大統領になる」とも言われています。これは彼が大統領になれば、滅茶苦茶なことを行ってアメリカを破滅させ国がなくなる、という意味だそうです。
 TPPについては本質をついているけど、その人柄や発言を見れば、アメリカに終わりをもたらす、という可能性が確かにあるのかもしれません。
 しかし、そのトランプを大統領に就任させて、アメリカ、そして世界を壊滅的な混乱に陥れようとしている抗いがたい力が働いているようにも思えます。

 今、世界中でIS(イスラム国)や、ISの影響を受けた人々による無差別殺人テロが頻発しています。
 これは正当な理由なく行われたイラク戦争によって起きた悲劇的な混乱や、欧米諸国のイスラム世界に対する敵視・無関心、そして世界中に広がる格差などが元になってIS への支持が広がり、こういったテロにつながっていると考えられます。
 不満・怒りを持つ者に対して「天国に行ける」という言葉で洗脳し、自らの命と引きかえのテロを実行させる、ということをISが行っているかもしれませんが、自爆テロに心を惹かれる人々が数多くいるということがまず問題でしょう。
 それだけテロに向かう人の心の底にある怒りや悲しみ、絶望が救われようもなく大きくなっているということだと思います。
 世界中でテロが起きて騒然としている一方で、現在アメリカではスマホで遊べるゲーム「ポケモンGO」が爆発的な人気だそうです。(日本でも発売され大きな話題です)多くの人がこれに浮かれ、我を忘れて楽しんでいるということがニュースで放映されていました。
 この今の世界で同時に隣り合って存在している、乱痴気騒ぎとあまりに暗い闇とのコントラストの強さは、世界に起きている分裂をありありと表しているのではないでしょうか。
 そして、世界中の虐げられた人々の心の奥にある、もうこれ以上この分裂に耐えられない、という無意識のうごめきがトランプ大統領を誕生させて、世界を破滅に導こうとしているように私には思えてしまいます。


 



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