この間、ふと思い出した昔の出来事を書いてみます。



 20年以上前、私が十代だったころの話です。
 当時、便利屋でアルバイトしていました。
 会社は便利屋といってもそういった仕事の依頼は少なく、ふだんは清掃会社の下請けが中心で、ビルの床掃除をすることが多かったです。
 あるとき珍しく便利屋の仕事が入って、夕方2時間くらいの片付けの仕事をすることになり、社長と2人で行くことになりました。


 現場の公民館みたいなところには、40過ぎくらいの男の人が1人でいましたが、一目見てビックリしてしまいました。
 そこはかなり広めの部屋が二つあるフロアで、その両方の部屋の床じゅうに、ラミネート加工されたチラシがものすごい量バラ撒かれていたんです。
 どうやらセミナー的なものを行ったその後片付けということらしいのですが、何が起きればこんな狂ったような状態になるのか全く理解できません。
 
 そして、いくつも並べられた机の上には本が無造作に置かれていて、そのタイトルを見ると、「福祉と金儲けの両立」なんて感じのものばかりで、とにかく胡散臭いにもほどがあるというものでした。
 


 まあ、とにかくこちらは言われたことをやるだけですから、社長と二人黙々と片付けだしました。

 すると、そこへ60代くらいの夫婦が訪れてきて、男の人と話しだしました。
 大声で話し、内容が筒抜けだったので聞いてると、どうやら百円ショップみたいなものを始めることを勧めている様子です。
 仕入れがとにかく安いからメチャクチャ儲かる、という男の口調の滑らかさから、夫婦はどうも興味を示してるようでした。
 そして、その事業を始めるのには最初にまとまったお金(500万位だったか)を払ってもらいたい、と男が言い出し、「お金は銀行から借りちゃ絶対ダメですよ!こんないい話があるのを銀行が知ったらほっとかないから」と付け加えています。
 銀行に行けば、「そんなアホなことやめとけ」と言われるのは十代の私にも分かりましたが、こんなことを言われてもまだ夫婦は乗り気だったらしく、男とまた会う約束をして帰っていきました。


 便利屋の社長は娘の学費をパチンコで稼ぐというクセ者っぽい人でしたが、「欲の皮がつっぱってるからだまそうとしてるのに気づかないんだな」とあきれ顔。
 片付けてる間中、社長は馬鹿らしいという顔がモロにでていました。

 
 大方片付け終わり、私一人で車に荷物を入れてると、男の人が来て一服しだしました。
 そして、私に向かって「おたくの社長態度悪いな。ああいうことじゃダメだ」と吐き捨てるように言ってから、「これ取っておいて」と千円札を差し出してきたんです。
 もらうと詐欺の片棒を担ぐみたいで嫌ですが、とっさのことで強く断ることもできず、なんとなく貰ってしまいました。
 私に小遣いをくれてもあまり意味はないだろうけど、自分が後ろめたいことをやっているという気持ちも多少あったのでしょうか。

 後日、また男から片付けの依頼があったけれど社長が断ったみたいです。
 


 今は電話を使った詐欺事件が大きな社会問題になっています。
 電話詐欺は明らかな犯罪ですが、あのおじさんのやっていたのはギリギリ違法にならないくらいの手口だったのかもしれません。
 とはいっても、完全に人をだまして喰いものにする稼業だろうから、しょうもない人間ということは言えるでしょう。

 しかし、あの当時、そんな人からでも千円をもらうと、その軽蔑の気持ちが薄らいだように感じるということがありました。
 500円では少ないし、それ以上だとなにか心理的負担になってしまうから、千円札一枚というのはちょうどいい金額だと思います。
 千円くらいで人を簡単に手なずける、なるほど詐欺師はうまいことをします。
 その時の経験がなんとも印象深かったので、それ以来、私は何か気まずかったりするとき、この千円の効力を使うようになりました。


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